文部科学省「人文学・社会科学特別委員会」にて岩田直也が登壇します

12/4/2025

Humanitextプロジェクトのビジュアルイメージ

2025年12月5日(金)、文部科学省が開催する「科学技術・学術審議会 学術分科会 第28回人文学・社会科学特別委員会」にて、Humanitextプロジェクトのコアメンバーであり、名古屋大学デジタル人文社会科学研究推進センター准教授の岩田直也が話題提供を行います。

今回の委員会では「人文学・社会科学研究におけるDX・AI活用」が主要議題として取り上げられ、これからの学術研究のあり方について議論が交わされます。

発表の概要

岩田は『人文学研究の「高度化」と「民主化」に向けたAI活用モデル』と題し、西洋古典対話システム「Humanitext」の実践事例と、次世代の研究基盤となる「AI Readyなデータ」の構築について発表します。

主なトピックは以下の通りです。

1. 西洋古典対話システム「Humanitext」の実践

100名の著者、1000作品を超える西洋古典の原典から、ユーザーの問いに対して意味的に最適なテキストをピンポイントで抽出するRAG(検索拡張生成)システムの実践について紹介します。 独自の「文脈指向翻訳(Context-Oriented Translation)」技術により、AIが理解しやすい中間データを生成することで、古典語のような低リソース言語でも高精度な検索を実現しています。また、すべての回答に原典の出典を紐づけることで、学術研究に不可欠な検証可能性(Verifiability)を担保している点が大きな特徴です。

2. 「AI Ready」なデータ基盤への転換

これまでのデジタルアーカイブで主流だったTEI/XML形式(木構造)は、人間による閲覧や保存には適していますが、文脈が断片化しやすくAIによる推論には不向きでした。 本発表では、これを「ナレッジグラフ(知識グラフ)」へと再構築し、概念や解釈を多層的に結合させることで、AIが高度な推論を行える「AI Ready」なデータ構造へと転換する必要性を提言します。

3. 人文学研究者の新たな「勝ち筋」

計算資源を競う大規模言語モデル(LLM)の開発競争ではなく、AIに入力する「コンテキスト(文脈・ドメイン知識)」の質で勝負することこそが、AI時代における人文学の「勝ち筋」であると論じます。 また、こうした研究基盤を構築するためには、従来の研究能力に加え、データ構造の設計図を描ける「アーキテクト(設計者)」としての視点を持った次世代型研究者の育成が急務であることについても触れる予定です。

Humanitextプロジェクトは、日本発のシステムとしてグローバルコミュニティに新たな選択肢を提供し、人文学研究の国際的なプレゼンス向上に貢献してまいります。

開催情報

  • 会議名: 科学技術・学術審議会 学術分科会 人文学・社会科学特別委員会(第28回)
  • 日時: 令和7年12月5日(金) 16:00~18:00
  • 場所: オンライン開催
  • 議題: 人文学・社会科学研究におけるDX・AI活用について 他

詳細および傍聴については、文部科学省の公式案内をご覧ください。