デジタルアーカイブ学会第10回研究大会での登壇報告
1/24/2026

2026年1月、一橋講堂(東京都千代田区)にて開催された「デジタルアーカイブ学会 第10回研究大会」において、Humanitextプロジェクトの岩田直也(名古屋大学)が登壇いたしました。
本大会は、デジタルアーカイブの可能性を分野横断的に探る場として開催され、Humanitextプロジェクトからは、オープニングアクトおよびサテライト企画セッションの2つの枠で、これまでの実践と今後の展望について報告を行いました。
オープニングアクト:AI for DA / DA for AI
1月9日(金)に行われたオープニングアクト「AI for DA / DA for AI」では、AIとデジタルアーカイブの双方向的な関係性について議論が交わされました。
Humanitextプロジェクトでは、「デジタルアーカイブ(DA)」をAIのための信頼できる知の基盤(Source of Truth)として再定義する「DA for AI」の重要性を提唱しました。
LLM(大規模言語モデル)の普及に伴い、ハルシネーション(もっともらしい嘘)のリスクが課題となる中、厳密に校訂された一次資料やTEI(Text Encoding Initiative)などで構造化されたテキストデータが、AIの推論を根拠づける「Grounding」の役割を果たすことを強調しました。
同時に、OCRや構造化のコストをAIが劇的に下げる「AI for DA」の側面も活用し、アーカイブを「作る」コストを下げつつ、そこから「使う」ための新たな意味的アクセスを提供していくという、Humanitextが目指す循環モデルについて発表しました。
サテライト企画セッション:人文学テキストを“AI Ready”にする
これに先立つ1月6日(火)には、サテライト企画セッション「テキストが拓くデジタルアーカイブの可能性 ―生成・構造化・活用の実践―」にも登壇しました。
ここでは「Humanitext Antiqua Project」の実践事例をもとに、従来キーワード検索では到達困難だった「意味」へのアクセスを実現する手法について解説しました。
具体的には、以下の3層構造によるデータモデルの構築です。
- The Archive: TEI/XMLによる永続的な保存層
- The Text Body: DTS(Distributed Text Services)とベクトル検索を用いたコンテクスト層
- The Knowledge Graph: テキスト間の引用・参照関係をグラフ化した知識層
これらを組み合わせた**GraphRAG(Graph-based Retrieval Augmented Generation)**のアプローチにより、単なる情報の検索を超え、文献学的な文脈を辿りながらAIが推論を行う「典拠付きの解釈的対話」への転換を提案しました。
Humanitextプロジェクトでは、今後もデジタルアーカイブ技術とAI技術の融合により、人文学研究の新たな地平を切り拓くための活動を続けてまいります。